なぜ未経験エンジニアを採用するのか?企業が未経験者に期待していること

なぜ未経験エンジニアを採用するのか?企業が未経験者に期待していること

近年、IT業界では未経験からエンジニアを目指す人が増加しています。
企業側も経験者だけでなく、未経験からキャリアチェンジした人材の採用に積極的になってきました。

そこで本記事では、なぜ企業が未経験者を採用するのか、未経験者に対してどのような点を期待しているのかを解説していきます。

未経験者の方は、エンジニアを目指したい場合にどのような点を意識したらいいのか考えてみましょう。

なぜ未経験エンジニアを採用するのか?

経験者と比べて未経験者を採用するメリットは何でしょうか。

未経験者を仕事ができるようになるまで育成するのにはコストやノウハウが必要ですが、経験者であれば、すでに一定のスキルやプロジェクトの経験を身に着けているため、即戦力として活躍が見込めます。

では、いったいなぜ未経験者を採用するのでしょうか?以下の5つの理由があります。

  • 別の職種や業界での経験がある人がほしい
  • 白紙の状態から企業の求める人材に育成できる
  • 能力よりも価値観や人柄を重視している
  • 経験者より採用しやすい
  • 経験に関わらず優秀な人を採用したい

別の職種や業界での経験がある人がほしい

ITエンジニアに転職する人は、これまでの職種や業界で様々な経験を積んできています。
例えばサービス業出身者ならば顧客対応力に長け、製造業出身者ならば製造プロセスを熟知しているかもしれません。

このようにIT以外の分野で培った経験や発想を生かせば、新しい視点からの問題解決やアイデアが期待でき、異なるバックグラウンドを持つ多様な人材を揃えることで、組織の活性化や新しいイノベーションが生まれる可能性も高まります。

特に受託企業の場合、様々な業種や規模の企業からシステム開発を請け負うことになります。
そのため、クライアント企業の業務プロセスや課題を的確に捉える専門性や、最適なソリューションを提供する力が何より重要になってきます。

その点においても未経験者の異業種の経験は強みとなります。

白紙の状態から企業の求める人材に育成できる

経験者は過去のプロジェクトのやり方やルールに拘りがちで、新しい会社の方針に合わせるのが難しい場合があります。

今までとは異なる発想や価値観を取り入れるためには、ある程度からっぽの状態に戻す必要があり、それは簡単ではありません。

会社独自のプログラムや開発の進め方などになじめず、優秀な人材を採用したつもりでも短い期間で辞められてしまうケースも見られます。

一方、未経験者の場合、過去の経験にとらわれる心配がないため、企業が望む考え方やスキルを、白紙の状態からしっかりと学ばせることができます。

テクノロジーは日進月歩で進化を遂げています。組み込むべきフレームワークやアプローチ、つまり企業が求める人材像も、常に変わり続けています。
未経験者なら、会社の理想に合わせてゼロベースから最新の知識や価値観を身につけさせるのが比較的容易です。

つまり、長期的な視点に立てば、未経験者には白紙に自由に描ける分、企業が本当に求める人材を育成しやすいというメリットがあります。

即戦力が欲しければ経験者を、将来を見据えた人材投資なら未経験者を、それぞれの事業ニーズに合わせて企業は採用を行っています。

能力よりも価値観や人柄を重視している

企業が未経験者を採用する際、単なるスキルや能力よりも、その人の価値観や人柄を重視する傾向にあります。
技術力は入社後に鍛えられますが、人となりは生まれ持った部分が大きいからです。

「後天的性質」と「先天的性質」をご存じでしょうか?


後天的性質とは、経験を積んだり教育を受けたりして培われるものを指します。
例えばITであれば、プログラミングの知識、アジャイル開発の実践力、問題解決能力などがこれに当てはまります。
入社後の研修や先輩からのOJTで磨いていけば、未経験者でも後天的資質を伸ばすことができます。

一方で、先天的な資質は生まれついた素質のことです。
主体性、向上心、コミュニケーション能力、工夫する姿勢など、人間性や性格そのものに関わる部分が挙げられます。

こうした先天的性質は、後天的性質と比べて教育で変えることが難しいため、企業は先天的性質を重点的にチェックしています。
優れた人柄と価値観があれば、後は後天的にスキルを伸ばせば良いと考えているからです。

一方、技術は備わっていても、人間性に難があれば会社やチームの中で長く活躍できないだろうと考えているのです。

そのため、未経験者であっても人柄や価値観が会社にマッチしていれば採用するという企業が多いのです。

経験者より採用しやすい

これは当たり前のことなのですが、採用市場では経験者よりも未経験者の方が圧倒的に数が多いです。

そのため、常に人手不足が続いているIT業界では、経験者に絞って人材募集をしてしまうより、未経験を採用の対象に加えた方が、採用できる人数を増やすことができます。

経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、IT人材不足の上昇はどんどん加速し、2030年には約80万人のIT人材が不足すると予想されています。

出典:経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」

先ほど「先天的性質」と「後天的性質」の話をしましたが、育成のノウハウや体制が整っている企業であれば、未経験者の中で価値観や性格が会社にマッチした人材を採用し、育成した方がよいと考えるのです。

現在、IT業界の経験者採用市場はレッドオーシャンであり、企業は年収や待遇をアピールし、競合他社より自社を選んでもらおうと必死です。

その中に飛び込んでいくのは茨の道ですし、採用できる人数が予測しづらいと経営判断にも影響がでます。

そのため、「未経験者を採用し、育成をする」という選択を取るのです。

経験に関わらず優秀な人を採用したい

企業がほしいのは「経験がある人」ではなく「仕事ができる優秀な人」です。
この2つは=(イコール)ではなく、未経験者の中にも経験者の中にも「仕事ができる優秀な人」は存在します。

優秀な人を求めて経験者を採用した結果、実際には仕事があまりできず成果があげられなかったといったケースもあります。
それは未経験者を採用した場合にも起こり得ますが、経験者の場合はある程度高い年収を提示している分、失敗したときの痛手が大きいのです。

例えば、「Reactの実務経験3年」といった時に、「毎日ガッツリ開発をしてきて、Reactを使ったフロントエンドの開発であれば、大抵のことは任せられる」という状態の人もいれば、「開発の割合は20%ぐらいで、他はドキュメントを修正したり、顧客の対応をしてきました」という人もいます。
面談やコーディングテストで完全に判断できればいいのですが、「もし想定とは違う人材を採用してしまったら。。。」という恐れを企業は抱いています。

また、経験者を採用するよりも、ある程度の学歴を持っている人や地頭がいい人を採用して教育した方が、優秀な人を獲得できてコスパがいいと考える企業も存在するのです。

企業は未経験者に何を期待しているのか

ここまで、企業が未経験者を採用する理由について解説していきました。
今までの話の中で少し見えてきたかもしれませんが、ここからは「企業が未経験者に期待していることは何なのか」について解説していきます。

異業種の専門性とビジネス力の発揮

先ほどの「別の職種や業界での経験がある人がほしい」でも説明しましたが、異業種のシステムを扱うことの多いIT業界では、その業界の理解と専門的な知識を持っていることは大きな武器となります。

例えば、採用管理システムの場合、「人事担当として採用に携わってきた経験」や「人材サービスの会社で働いた経験」を生かすことができます。
また、プロジェクトを進めるにあたって、技術力以外のコミュニケーション能力、課題発見力、チームワークなどもエンジニアとして必要な能力となってきます。

これらを異業種で経験してきた未経験者は持っていると企業は期待しています。

チームで成果を上げること

大抵のプロジェクトでは複数人のチームで開発を進めていきます。

そのため、円滑なチームワークと他者とのコラボレーション能力が求められる場面が多く存在します。

チームの中で自分の役割や自分ができることをきちんと理解し、プロジェクトを成功させるにはどうしたらいいかを自分の頭で考えられることが重要であり、自分のタスクだけでなく、プロジェクト全体に気を配れる人を企業は求めています。

リーダーやマネージャーなど、管理者として活躍してくれること

「エンジニアとして優秀=管理者として優秀」ではありません。
技術力とマネジメント力は別物であり、どちらも秀でた人は少ないのが現状です。

もちろん、技術に対する知見や経験は、ITプロジェクトの管理をするにあたって必要不可欠です。
しかし、単に技術力が高いだけではプロジェクトを成功に導くには難しく、その人が本来持っている素質によって管理者に向いているかどうかが決まってくるのです。

ここでよくある失敗例をご紹介します。
SIer業界では特に顕著なのですが、エンジニアとして年数を重ねていったエンジニアをアーキテクトやプロジェクト管理者の地位に無理やり引き上げ、その結果、プロジェクトがうまくいかず炎上してしまうケースがあります。

なぜそのようなことを企業はしてしまうのでしょうか?

SIerはその人の売り上げ(多くは単価)に基づいてお給料を支払っているため、ただのエンジニアに高いお給料を出すのが難しい場合が多いです。

そのため、お給料をあげるために、一人で成果を上げるのではなく、部下を持ち、チームで成果を上げてもらう必要があるのです。
また、顧客に「この人アーキテクトです」「この人プロマネです」と言えれば単価をあげることができます。

メンバーの一人として活躍してきたエンジニアを、その人の素質を考えずに立場だけ変えても、うまくいくはずがありません。
そうは言っても、人手不足なIT業界の中で、管理者を用意しなくてはいけないという現実もあります。

そのため、未経験者から管理者に向いている人を採用して、育てて、管理者になってもらおうとするのです。

まとめ

これまで、なぜ企業が未経験者を採用するのか、未経験者に対してどのような点を期待しているのかについて解説してきました。

この記事で書いたことは、必ずしもすべての企業に当てはまるわけではありません。
未経験者を採用する企業が増えていく中で、本記事を通じて互いの理解を深め、成功への第一歩を踏み出す助けになればと思います。

未経験を採用しようとしている人事担当者様、未経験からエンジニアを目指している方々の参考になりますように。

うさ丸

記事一覧へ >

この記事に関するキーワード