エンジニア業界はなぜ人出不足?現状と原因を解説!
2024.05.07
近年、ニュースや新聞で運送業界や飲食業界などの人手不足が取り上げられています。
同様に、急速なテクノロジーの進化やデジタル化の普及により、IT業界も深刻な人手不足となっています。
このような人手不足はなぜ、どのように起こっているのでしょうか。
本記事では、なぜエンジニア業界において人手不足が生じているのか、大企業やベンチャー企業で働いていた現役エンジニアが解説します。
エンジニア業界の人手不足問題
現在エンジニア業界では、人手不足が深刻です。
2016年に公表された経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、クラウド・AI・IoT分野などに係るITサービス市場の成長と共に、それらを扱うIT人材が減少すると予想されています。
実際に2023年時点では、30万人以上のエンジニア不足が発生している状況です。
そのため、企業では転職・業務委託市場におけるエンジニアの取り合いが発生しており、エンジニアの年収・給与は増加傾向にあります。
最近では「前職給与保証」を謳う企業も増え、エンジニアは転職をする度に給与が上がっていく現象が発生しているほどです。
しかし、今現在も市場でのエンジニア不足は解消しておらず、日本政府もリスキリング政策や教育訓練プログラムへの助成などの施策でデジタル人材の育成支援を行っている状況となっています。
人手不足の現状と実態
ここからは、IT企業における人手不足の現状と実態についてご紹介します。
エンジニアの人手不足により、実際の労働環境がどのようになっているか見ていきましょう。
プロジェクトの掛け持ち
通常、エンジニアは1人工(=1か月分の業務工数)で契約したプロジェクトはそのプロジェクトのみに専念することが一般的です。
しかし、人手不足が発生している企業では、プロジェクトに対してエンジニアの数が足りず、1人のエンジニアに複数のプロジェクトを担当させる場合があります。
エンジニアが複数のプロジェクトを同時に担当することで、サービス品質が低下する恐れがあります。
実際に、筆者は同時期に2〜3つのプロジェクトを掛け持ちして構築・運用を行っていました。
1つのプロジェクトの開発中に、別プロジェクトでトラブルが発生した際は、進行しているプロジェクトを止めてトラブル対応をしなければならないため、スケジュールが後ろ倒しになることも頻繁にありました。
1人休むと業務が回らない
エンジニア業界において、1人のエンジニアが休職・退職するだけで業務の進捗が滞ることは珍しいことではありません。
これは、担当していた業務を他のエンジニアが代替することが困難であるためです。
プロジェクトではその分野に特化した特定の知識や要件が必要となります。
そのため、別のエンジニアがカバーする場合でも、プロジェクトの理解に3〜4日ほど日程を後ろ倒しにしなければなりません。
もちろん、スケジュールの後ろ倒しをクライアント側が良しとしない場合は、残業によってカバーすることとなります。
人員補充が失敗に終わる
エンジニア業界において人手不足を解消するため、企業は新たな人材を確保します。
しかし、この人員補充が失敗に終わってしまう場合があります。
これは、エンジニア業界は高度な専門性を要求される分野であり、優れた技術力や経験を持つエンジニアの確保が難しいためです。
適切な人材が見つからず、未経験者やスキルが不足している人材を採用してしまい、結果として人手不足が解決しない状況となってしまいます。
人手不足の原因とは
ここまでは、エンジニア業界における人手不足の現状と実態について紹介しました。
ここからは、筆者が実際に経験した、IT企業が人手不足になっていた原因について解説します。
徹底したコストカット
エンジニア業界における人手不足の原因の一つは、企業の徹底したコストカットです。
ITやDX化の需要が増す一方、開発するIT企業自体も増加傾向にあります。
そのため競争力の弱い中小企業では、より安く、高品質なサービスを提供しなければなりません。
このような背景があるため、採用や育成にかける予算が限られ、適切な人材を確保することが難しくなっています。
また、上述したように、プロジェクトの掛け持ちや長時間労働をさせることで、利益を最大化している企業もあります。
会社の資金配分方針
企業内における部署ごとの資金配分により人手不足に陥っている場合があります。
これは特に大企業で見られる事象です。
企業が注力している部門や売上率の高い部門に対して投資を行い、その他部門では予算を削減します。
そのため、予算が削減された部門においては人員も削減せざるを得なくなり、結果として人手不足となります。
筆者が勤めていた企業では、運用部門の人員を削減し、AIやDXをいった先端技術に投資を行っていました。
運用部門では、半年ごとに人員が1名ずつ削減され、10名で運用していたチームも2年後には6名で運用しなければならない環境になっていました。
待遇・職場環境が悪い
企業によっては待遇や職場環境が悪いことが原因で人手不足になっている場合もあります。
従来、建設業や介護職の現場で「きつい・汚い・危険」の頭文字である3Kという表現がありました。
しかし、現在ではIT系の職場において新3K「帰れない・厳しい・給料が安い」という言葉が使われるようになっています。
企業のコストカットや利益拡大のために、労働者の業務負荷が大きくなると、労働環境が悪くなってしまいます。
このような環境ではエンジニアのモチベーションや幸福度が低下し、離職率の上昇、さらなる人手不足となり、組織全体が負のスパイラルに陥ることとなります。
求められるスキルの難易度が高い
求められるスキルの難易度の高さも人手不足の要因の一つです。
IT分野は肉体労働とは異なり、一朝一夕のスキルや知識では就業することが難しい職業です。
また、新たなプログラミング言語やフレームワーク、クラウドサービスなどの技術が次々と登場し、自己研鑽を続ける必要があります。
そのため、エンジニアに求められるスキルを習得するまでのハードルが高く、人材の供給が追いつかない状況が続いています。
派遣・業務委託として契約したい
人手不足は企業側によって引き起こされている場合もあります。
一部の企業では、正規雇用ではなく、派遣や業務委託といった雇用形態を選択する傾向があります。
これは、人件費の削減やリソースの効率的な活用を求める意向が背景にあります。
例えば、アプリやシステム開発は半年から1年程度のサイクルで行うことが一般的です。
案件受注が定期的に見込めない場合は、自社の人員を遊ばせてしまうこととなります。
そのため、派遣・業務委託社員を増やすことで、企業は必要なときにエンジニアを雇用するだけでなく、必要な期間だけ支払いを行うことができるため、人件費のコントロールがしやすくなります。
一方で、派遣や業務委託で開発を行うエンジニアの立場としては、雇用契約の期間や条件が不透明となり、安定した収入が見込めなくなってしまいます。
また派遣や業務委託契約では、数年ごとに職場が変わるため環境の変化が激しく、精神的にも辛いと感じる人も少なくありません。
以上の理由により、現在の市場では企業と働き手の双方の需要がミスマッチしているため、慢性的な人手不足となっています。
まとめ
本記事では、エンジニア業界における人手不足の現状や原因について解説しました。
エンジニア業界では様々な要因により、慢性的な人手不足となっています。
この記事を読んで、IT業界に入ることは辞めておこうと感じた人もいるかもしれません。
しかし、IT企業において全ての会社が人手不足となっているわけではありません。
従業員を第一に考え、報酬や福利厚生も充実した企業もあります。
また、人手不足の状況下においても、報酬などの面で優遇している企業もあります。
実際、筆者自身も人手不足で苦しんだ時期もありますが、エンジニアの仕事はそれ以上にやりがいや働きやすさがある仕事です。
そのため、これからエンジニア業界を目指す人や、転職を考えている人にとっては、企業選びが最も重要です。
転職サイトや求人サイトは複数ありますが、それぞれ取り扱っている求人の業界や掲載企業数には違いがあります。
エンジニアに特化した転職サイトやハイクラス人材向けの転職サイトもあるため、自身に合った転職サイトを活用すると良いでしょう。