海外に開発依頼をしたら案件が炎上!オフショア開発の現実を紹介
2024.08.21
オフショア開発は、コスト削減やIT人材の確保を目的に、近年多くの企業が採用しています。
しかし、その現実は決して一筋縄ではいかず、プロジェクトに支障をきたす場合もあります。
本記事では、オフショア開発のメリット・デメリット、そして実際に私がオフショア開発をして失敗した体験談をご紹介します。
オフショア開発とは
オフショア開発とは、企業が自国以外の国にソフトウェア開発を委託する形態です。
主に開発コストの削減や、国内では確保しにくいIT人材の確保を目的としています。
はじめに、オフショア開発のメリットとデメリットを見ていきましょう。
オフショア開発のメリット
まずオフショア開発のメリットについてご紹介します。
- 開発コストの削減
オフショア開発の最大のメリットは、開発コストの大幅な削減です。
例えば、日本人のエンジニアを1ヵ月雇う場合、50万円~70万円の費用が発生します。
しかし、オフショア先であるベトナムやフィリピンのエンジニアは20万円/月で雇用可能です。 - IT人材の確保
国内でのIT人材の不足を補うためにもオフショア開発は有効です。
海外では、いち早くICT人材の育成に力を入れている国もあり、人的資源が豊富にあります。
高度なITスキルを持つ人材が豊富な国に委託することで、プロジェクトをスムーズに進行させることができます。
(参考:諸外国における高度ICT人材育成)
オフショア開発のデメリット
次に、オフショア開発のデメリットをご紹介します。
- 品質管理が難しい
オフショア開発のデメリットとしてまず挙げられるのは、品質管理の難しさです。
言語の壁や物理的な距離の制約により、期待通りの成果物が得られない可能性があります。 - コミュニケーションが難しい
次に、コミュニケーションの難しさも大きな課題です。
異なる言語や文化背景を持つチームとのコミュニケーションは、誤解やミスコミュニケーションを引き起こしやすくなります。
プロジェクトマネージャーやブリッジSEの役割が非常に重要となります。
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【外国語×IT】英語ができる人必見!ブリッジSEについて解説! - 異文化理解が必要
最後に、異文化の理解が必要である点も見逃せません。
ビジネス習慣や労働環境の違いが、プロジェクトの進行に影響を及ぼすことがあります。
例えば、納期に対する考え方や報告の頻度、問題解決のアプローチなどが異なると、計画通りに進めることが難しくなります。
また、正月や祝日の期間・日程も日本と異なるため、都度調整が必要です。
オフショア開発で案件が炎上した事例
オフショア開発には多くのメリットがある一方で、実際の運用においては様々な問題が発生することがあります。
ここからは、実際にIT企業でオフショア開発をしていた経験を基に、プロジェクトが炎上した事例をご紹介します。
誤字・脱字のオンパレード
私が所属していたIT企業では、PMとデザイン、インフラ構築は日本が担当していました。
しかし、人手不足のためフロントとバックエンドはベトナムへ委託していたのです。
結果、開発完了時の品質テストで実際のアプリ画面に誤字・脱字が多発していることが判明しました。
具体的には、「ID・パスワードを再度ご確認ください」と表示すべき場所で「IDとパスワードが確認されてください」と不自然な日本語になっていました。
また、「Khi gửi lại」とベトナム語のままの箇所もあります。
最終的に日本人メンバーで総チェックをすることになり、無駄な工数が発生しました。
また、チェック前にステージング環境をクライアントに見られたことで、クレームが来たこともあります。
コミュニケーションエラーが頻発
オフショア開発では、コミュニケーションエラーも頻発します。
例えば、プロジェクトの重要な仕様変更が適切に伝わらず、開発チームが間違った方向に進んでしまうことがありました。
また、オフショア側に間違いを指摘した時も、「それができません」、「何と言ったらいいか分かりません」と、お互いの語彙力不足により原因の深堀も難航します。
他にも、ベトナムのお国柄なのか、家でニワトリを飼っているらしく、ミーティング中にニワトリの鳴き声でメンバーの声が全く聞こえないということもありました。
気が付いたらサボっている
オフショア開発では、開発チームがリモートで作業するため、実際の労働状況を把握することが難しい場合があります。
ベトナム側への指示が何かしらの理由で通っておらず、1ヵ月の間ずっと開発がストップしていたことがありました。
理由を聞いても「指示がなかった」の1点張りで、自分たちは悪くないというスタンスだったと言います。
他にも、一つ一つのタスクの作業スピードが遅い場合や、ミーティングの遅刻なども日常茶飯事でした。
最終的に、ベトナムメンバーのみ朝会や1on1ミーティングを導入することで対策を行いました。
ブリッジSEの工数不足
ブリッジSEは、オフショア開発において国内チームとオフショアチームの間を繋ぐ重要な役割を担います。
しかし、私が在籍していたプロジェクトでは、ブリッジSEの工数が不足していたのです。
具体的には、ブリッジSEが他チームのミーティングやタスクに当たっており、私が依頼をかけても対応してくれない状態でした。
結果的に、ベトナムのメンバーと私がGoogle翻訳を使いながら開発を進めることになりました。
これにより、開発の品質や効率が落ちることになりました。
オフショア開発をする場合は、ブリッジSEの工数も正確に計算する必要があります。
時差による影響も
オフショア開発では、時差の問題も大きな課題となります。
例えば、ベトナムと日本の時差は2時間であり、日本時間の11時頃にベトナムチームが現地9時で稼働が始まります。
また、日本時間18時の定時の時間は、ベトナムでは16時であるため稼働真っ最中です。
そのため、ミーティングをする時間が限られる場合や、トラブルが起きた際に日本メンバーが再出社したこともありました。
また、ベトナム側が気を遣って朝7時から出社してくれることもありましたが、ベトナム側メンバーの中には、それが原因で仕事を辞める方もいました。
音信不通になることも
オフショア開発では、突然音信不通になるケースもあります。
これは、現地のインフラが脆弱であるためです。
ベトナムやフィリピンなどの国はインフラが弱く、頻繁に停電が発生します。
このため、納期が迫っているにもかかわらず、開発チームと連絡が取れなくなり、プロジェクトが大幅に遅延したプロジェクトがありました。
Slackが外国語ばかりに
案件の炎上とは異なりますが、オフショア開発で苦労した話をご紹介します。
会社ではコミュニケーションツールとしてSlackを利用していました。
そこにベトナムメンバーも加わるのですが、Slackがほぼベトナム語で埋め尽くされていたのです。
日本メンバーとの会話も同じSlack内で行うため、非常に可読性が悪く、過去の履歴等を追うことが困難な状況となっていました。
まとめ
オフショア開発は、多くのメリットを持つ一方で、様々な課題も存在します。
オフショア開発を成功させるためには、異文化理解やコミュニケーション、進捗管理が不可欠です。
オフショア開発の知見がない状態で開発を始めると、プロジェクトにトラブルが発生するかもしれません。
経験のある企業を間に入れるか、日本法人が運営する会社に依頼することをおすすめします。
本記事を通して、オフショア開発の現実を理解し、円滑なプロジェクト運営を行いましょう。