客先常駐(SES)の現実は?発注者目線の内情を暴露!
2024.08.21
IT業界の働き方の一つである、客先常駐(SES)。
企業がエンジニアを他社に派遣し、その会社の指示のもとで業務を遂行する形態です。
「客先常駐はつらい」という言葉はよく耳にしますが、発注者側の意見は意外と少ないかもしれません。
本記事では、現役エンジニアである筆者が、SESを発注する立場で感じていた内情や現実を解説します。
客先常駐(SES)とは
客先常駐(SES)は、エンジニアが所属する企業から他社へ派遣され、その会社で業務を行う働き方です。
現在、IT業界では人手不足が深刻化しています。
加えて、長期雇用というほどではなく、短期集中で人材を集めたい場合や、コストを抑えてマンパワーを集めたいという要望があります。
そこで現在ではSES企業がエンジニアを集め、適材適所にエンジニアを派遣するという手法が主流です。
これにより、企業は人材を安く確保し、プロジェクトを円滑に進めることができます。
SESにおけるメリット・デメリット
SESとして働く場合、さまざまなメリット・デメリットが存在します。
例えば、異なる企業の業務に携わることでスキルを広げる機会が得られる、SES企業へ就職し易いなどのメリットが挙げられます。
一方で、給与水準が低い、下流工程を任される、派遣先企業によって当たり外れがあるなどのデメリットもあります。
しかし、メリットよりもデメリットの方が上回るため、総じてSESは悪、やめとけと言われることが多いです。
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SESの仕事内容
次に、私がSESのエンジニアに依頼していた仕事内容をご紹介します。
- ネットワーク設備の監視・エスカレーション
24時間体制で全国のネットワーク設備を監視し、障害時はマニュアルに沿った対応をしてもらっていました。
また、異常発生時には常駐している社員へのエスカレーションをしてもらい、社員への引継ぎをお願いしていました。
体制としては、社員1人に対して、SESエンジニア5人で保守する形態です。
マニュアルもしっかりしており、不明点がある場合も社員で対応するため、SESエンジニアとしては簡単な業務内容だったと思います。
裏を返すと、スキルが身につかない仕事だったとも言えます。 - マニュアル作成
保守運用部署において、開発部門から新規サービスの受け入れがありました。
新規サービスの保守運用マニュアル作成が必要だったため、SESにてマニュアル作成の業務を実施してもらいました。
マニュアル作成はSESエンジニア1名で対応していただき、週1度のミーティングで社員とのレビューを行う形態です。
SESエンジニアの方は1名だけで、肩身が狭い思いをさせていたと思います。
マニュアル作成業務は3ヵ月程度で完了となりました。 - Git管理
GitのPull Requestを行うレビュー・マージ担当をしていただくこともありました。
これにより、システム開発や機能追加においてバグの発生が少なくなりました。
客先常駐(SES)の現実は?発注者側の内情
SESとして働くエンジニアが多い一方で、発注者側、つまりSESエンジニアを受け入れる企業の内情についてはあまり知られていません。
実は、発注者側もSESエンジニアとの関係において悩んでいることが多いのです。
私自身も、常時SESが10人以上受け入れているような部署で働いていた経験があります。
ここからは、発注者目線で見たSESの実態について、具体的な事例を挙げながらご紹介します。
SES企業は人を「モノ」として扱っている
まず、SESの受け入れをしていると、SES企業はエンジニアを「モノ」として扱っているのではないかと感じてしまいます。
これは、SES企業がエンジニアを派遣することで利益を得るビジネスモデルに起因しますが、エンジニア個々の成長やキャリアプランが軽視されがちです。
例えば、あるエンジニアは、数ヶ月ごとに異なるプロジェクトに配属されることが日常茶飯事でした。
各プロジェクトで十分な業務理解を得る前に別のプロジェクトに移されており、心理的な負担も大きいように感じました。
他にも、「自宅から勤務地まで1時間以上かかる場所に配属された」、「営業に言われて送り込まれました」という方もいます。
SES企業には悪質業者が存在する
SES業界の内情は、残念ながら悪質な業者が存在します。
これは、SES企業は会社へエンジニアを派遣さえすればお金が入ってくるためです。
例えば、エンジニアのスキルや経験を偽装して派遣させる会社があります。
あるエンジニアは「3年間の保守運用経験と、1年間の構築経験がある」と経歴に記載がありましたが、実際には「1年の保守運用経験のみ」だったことがあります。
経歴詐称の理由を問いただすと、「SES企業の営業からの指示」でした。
発注者としては、スキル不足の人材が来ると業務に支障をきたすため、十分なリサーチが必要となります。
発注者側も気を遣う
SESエンジニアが常駐する際、SES側は社外の人間であるため気を遣えと指示される場合があります。
しかし、発注者側もさまざまな気遣いをしています。
一つは、指揮命令系統の管理です。
SESは準委任契約となるため、指揮系統は受注者側となります。
私も、発注者側としては指示を出せないため、会話をする際には十分注意をしていました。
違反すると労働契約や偽装請負とみなされてしまい、労働法に違反する恐れがあります。
また、自社の守秘義務にも注意を払わなければなりません。
社員同士の会話や、共有フォルダのアクセス権限などを考慮して仕事を遂行します。
よく「SESの現場では社員と話さない」と聞きますが、上記理由があるため、積極的に話さないようにしているのです。
SES社員と仲良くなろうとは思わない
「SESは肩身が狭い」と内情としてよく聞きますが、私もそう思います。
これは、発注者側がSESと「仲良くやろう」とは思っていないためです。
SESは、プロジェクトが終われば自社に戻るか、別の企業へ常駐する可能性が高いため、長期的な人間関係を築く必要性をあまり感じません。
また、業務内容も社員とは別の簡単なタスクをやってもらうことが多いため、「一緒に苦楽を共にする」という感覚もないです。
これは必ずしも冷たい態度を取るというわけではありません。
仕事に対して感謝・リスペクトをしていますが、業務上での効率を重視した結果の選択となります。
会社の設備は使ってもらって良い
SESエンジニアが常駐する場合、会社の自販機や給湯室などの設備を使ってはいけないという風潮があります。
しかし、発注者側の私としては、特に何も気にしていません。
会社の設備は何を使っても大丈夫です。
休みの調整が面倒
SESエンジニアと発注者側との間で、休暇の調整が難航することがあります。
発注者側は、自社の社員とは異なる勤務形態や規則を持つため、自社社員側と照らし合わせて調整します。
また、これはSES側も同じことが言えます。
SESエンジニアとしても、自社と常駐先の企業に気を遣わなければいけません。
契約段階で休暇に関する取り決めを明確にし、両者が納得のいく形で調整を行うことが重要です。
まとめ
今回は、客先常駐(SES)の現実について、発注者側の視点から見た内情をご紹介しました。
本記事を通じて、SESエンジニアとしての働き方や、発注者側の内情を理解し、今後のキャリア形成に役立てていただければ幸いです。
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