SESは本当に悪なのか?!SESが「やめとけ」と言われる理由を解説

SESは本当に悪なのか?!SESが「やめとけ」と言われる理由を解説

SES(システムエンジニアリングサービス)企業について、ネット上では「未経験でも入社できる」「案件選べるからおすすめ」といった肯定的な意見もあれば、「やめとけ」 「ブラック企業」といった否定的な意見もあり、実際SESは良いのか悪いのか判断がつかず困っている方が多いと思います。

そして、これらの意見の大半がアフィリエイトサイトや偏ったポジショントークによるものであり、客観的な分析や評価は少ないのが現状です。

本記事では、SES企業と受託開発企業の両方の経験がある筆者が、SESが本当に「悪」なのか、そしてSESが向いているエンジニアはどういう人なのかを説明していきます。

SESが「やめとけ」と言われる5つの理由

一体なぜ「SESはやめとけ」と言われているのでしょうか?
それには以下の点が挙げられます。

  • 多重下請けの下位に位置することが多い
  • 給与水準が低い
  • スキルアップの機会が少ない
  • エンジニア以外の仕事をさせられる
  • 下流工程から抜け出せない

多重下請けの下位に位置することが多い

IT業界のプロジェクト(特にSI業界)では、複数の企業が関与する「多重下請け構造」が常態化しています。

クライアント企業が最初に元請け企業に業務を委託し、その元請けが2次請け、3次請けと業務を再委託していき、最終的には6次請けといった深い階層に位置するSES企業や個人事業主も存在しています。


この構造の中で、SES企業は階層の下位に位置することが多く、階層が深くなれば深くなるほどマージンが引かれてしまう(中抜き)ため、会社に入るお金は少なくなります。

最終的には企業の利益は限られ、それが直接エンジニアの給与水準の低さにつながってしまうのです。

給与水準が低い

先ほどの多重下請け構造の話でも出ましたが、SES企業は階層の下位に位置することが多く、階層が深ければ深いほどマージンが重なり、企業収益が減少し、エンジニアの給与水準も低くなりがちです。

SES企業の中には、1次請けや2次請けに位置する企業も存在し、そういった企業では余計なマージンが少ないため、より多くの収益をエンジニアの給与に還元してくれますが、数は少ないのが現状です。

しかし最近では、企業利益を最小限にし、単価の大部分をエンジニアに給与として支払う「高還元SES」という企業も登場しているため、SES企業と一口に言っても、収益構造や還元率によって給与水準には開きがあります。

このような給与水準の開きはSES企業だけでなく、受託開発や自社開発を行っている企業でも同様に見られます。

そのため、「SES=低賃金」と一括りにせず、企業ごとの収益構造や還元率・扱っている案件など、様々な要素を総合的に勘案する必要があります。

スキルアップの機会が少ない

SES企業でスキルアップが難しいと言われる理由は、SES企業が一番避けたいであろう「待機」と密接に関連しています。

「待機」とは、次の案件が決まらずに仕事がない状態を指します。

待機中は、企業は収入が途絶えるにもかかわらず、エンジニアに給料を支払い続ける必要があり、結果として赤字になってしまいます。

中には、「給料を満額支払わない企業」や「契約社員として雇用し、案件が切れたタイミングで契約を打ち切る企業」も存在し、それがSES企業がブラックだと言われる理由の一つとなっています。

SES企業は可能な限り待機を避けるために、既に経験がある技術分野の案件に優先的にアサインする傾向があります。

つまり、「新しい技術や未経験の分野に挑戦できる案件」よりも、待機のリスクを低減するために「現在のスキルセットに当てはまる案件」に派遣することが多いのです。

これはいわゆる「案件ガチャ」というもので、従業員は会社から指示された現場に派遣されるしかなく、その案件が嫌であっても我慢して働くしかありません。

また、SES企業にとって、新規の案件を用意するのは営業コストもかかり、待機のリスクもあるため、一度参画した案件については、できるだけ長く参画し続けてもらうたいのが本音です。

そのため、別の案件に変わりたいと会社にお願いしても意見が通らず、自分の希望と違う案件に参画し、結果として数カ月、場合によっては数年間を無駄にしてしまう可能性があります。

SES企業の中には「案件選択の自由」をアピールしている企業も存在しますが、待機を最小限に抑えるという根本的なニーズが変わるわけではありません。

このため、「案件選択の自由」が実際にどれだけの自由度を意味するのかは、必ずしも明確ではないのが実情です。

エンジニア以外の仕事をさせられる

SES業界では、「ロースキル案件」と呼ばれる、主に未経験エンジニア向けの案件があります。
「ロースキル案件」とは、「監視のランプを見るだけの仕事」や「カスタマーセンター・ヘルプデスク」といったサポート業務、「携帯販売」など、要求されるスキルレベルが比較的低めな案件のことを言います。

なぜこのような案件が存在するのでしょうか?

一般的に、未経験エンジニアは実務での開発経験がないため、開発案件で即戦力として活躍することが難しいという現実があります。

その結果、開発案件への参加が難しくなり、代わりにロースキル案件にアサインされることが多いのです。

一部のSES企業では、未経験者の経験年数を詐称して開発案件に入れるケースもありますが、これは不正行為であり、運よく開発案件に参画できたとしても、詐称した経歴と自分の実力のギャップに直面し、苦しむことになります。

市場では、未経験の人材が圧倒的多数を占めるため、一部のSES企業は未経験者を大量に採用し、ロースキル案件に入れることで利益を得ようとします。

ロースキル案件は単価が低いため企業の利益も少なくなりますが、人材がいないと利益をあげられないため、このようなビジネスモデルを採用しているのです。

エンジニアにとって「ロースキル案件」に参画することは、キャリアの初期段階では良い経験になるかもしれませんが、長期的に見るとエンジニアの成長にはつながらず、結果として開発案件への参画が長期にわたって難しくなってしまう可能性があります。

下流工程から抜け出せない

先ほどの「スキルアップの機会が少ない」にも関連しますが、SES業界では既に経験のある技術の案件にアサインするのが一般的です。

これにより、上流工程の経験がないエンジニアは、上流工程の経験を積む機会が少なくなり、下流工程に留まる可能性が高くなります。

しかし、この状況はSES企業だけではなく、ソフトハウスと言われる開発会社でも見られます。
IT業界のプロジェクトでは、上流工程をSIer(システムインテグレータ)が担当し、下流工程の実装やテスト作業をソフトハウスが担当するという構造がとられることが多いため、ソフトハウスの社員は上流工程に関わる機会が少なくなりがちです。

この問題は元請け以外の企業に当てはまるものであり、SES企業だけの問題ではありませんが、他の企業よりその確率は高くなるでしょう。

SESに向いているエンジニアの特徴

これまで、なぜSESは「やめとけ」と言われるのか、その理由について詳しく見てきました。
しかし、すべての人にとってSESが不向きというわけではありません。実際、特定の特徴を持つエンジニアにとっては、SESは適切な選択肢となり得ます。

それでは、SESに向いているのはどのようなエンジニアなのでしょうか?
順番に見ていきましょう。

フリーランスの自由さは欲しいけど、独立はしたくない人

「会社に縛られずに自由に働きたい」と、フリーランスへの興味を持つエンジニアは少なくありません。
フリーランスについてネットで調べてみると、SESと同じように肯定的な意見も否定的な意見あり、例えば、「自由に案件が選べて自分の時間も増える」「収入が増えた」といった意見もあれば、「インボイス制度の導入により淘汰される」や「案件が見つからないと収入が不安定になる」といった意見もあります。

実際、フリーランスは会社員と比べて収入が高く、エンジニア不足が深刻化している現在のIT業界ではあまり仕事に困りませんし、案件も自由に変わることができます。

この状況だけを見ると、「フリーランスも悪くないかも」と思うかもしれません。
しかし、フリーランスとして独立した場合、確定申告や営業活動など、技術以外の業務に時間を割かなければいけなくなります。

これらの業務は、自身のスキルアップに専念する時間を奪い、エンジニアとしての成長が遅くなってしまいます。

一方、SES企業では営業活動・年末調整・社会保険の手続きなどの煩雑な業務を会社が代行してくれるため、エンジニアは自身のスキルアップに専念することができます。

また、フリーランスの場合仕事がない期間は収入がなくなってしまいますが、会社員の場合待機になっていても給料が保証されています。(会社によって満額ではない可能性もあります)

ただ、SES企業はマージンを取るため、収入面で比べるとフリーランスの方が高いですが、還元率の高いSES企業を選ぶことで、この差を最小限に抑えることが可能です。

このように、フリーランスの自由さを追求しつつも、煩雑な業務からの解放や不安定さを払拭したい人にとって、SES企業は魅力的な選択肢となるでしょう。

人間関係に悩みやすい人

通常の企業では、もし同僚や上司との相性が悪かった場合、部署やプロジェクトを変更して対応することが多いですが、その結果「社内で居心地が悪くなってしまった」「会社で会った時に気まずい」といった問題が発生してしまいます。

特に小規模な会社では、部署が複数なかったり、社員数が少ない場合もあるため、解決のために転職をしなければならない場合があります。

しかしSES企業では、苦手な人がいても、単に別の案件に移動することで簡単に解決できます。
これにより、その人と再び仕事をすることなく、人間関係をリセットさせることが可能になります。

ワークライフバランスを大切にしたい人

例えば受託開発企業では、成果物の提出に基づいて報酬が会社に支払われるため、プロジェクトの進捗状況が直接会社の利益に影響します。
これにより、納期には特に厳しく、納期が迫ると、労働時間が長くなってしまうことがあります。

一方、SES企業では労働時間を基に報酬が会社に支払われます。
そのため、プロジェクトの成果物や進捗に対する責任があまりなく、現場のプレッシャーは受託開発企業と比較して少なくなる傾向があります。

このため、SES企業では残業が少なく、ワークライフバランスを保ちやすい環境が整っていると言われています。

実際の現場ではプロジェクトの状況が厳しく、稼働を高くする必要が出てくる場合もありますが、
労働時間が増加すると「追加のコスト」や「労働法に関するリスク」がSES企業に生じてしまうため、SES企業は高い稼働を避ける方針を取ります。

そのため、SES企業は従業員と会社を守るために、高い稼働を避けるよう現場に掛け合ってくれます。

まとめ

これまで、「SESがやめとけと言われる理由」と「SESに向いているエンジニアの特徴」について話してきました。

結論として、SESが良いか悪いかは、個々の「人や会社」に依存します。

SES企業には一次請け、二次請け、高還元SES、チームSESといった様々なタイプが存在し、それぞれに異なる待遇や働き方があります。
そのため、一概に「SESは避けるべき」と断言することはできません

「SESはやめとけ」と言われる理由の中には、受託開発企業や自社開発企業にも当てはまるものがあります。

会社を選ぶ際に最も重要なことは、「SESだから」「受託だから」「自社だから」といったカテゴリーで企業を判断するのではなく、自分にとって最適な働き方は何なのか、重視したいことは何なのかを見つけることです。

うさ丸

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